ふしぎな子の話
次男の保育園の同級生に、ちょっとふしぎな女の子がいる。
次男をお迎えに行くと、時々部屋の入口までやってきて、手品を見せてくれるのだ。
切れた!と見せかけてつながっている毛糸。折り紙でつくったおさいふの中に入ったらいつのまにか増えているコイン。種もしかけもぜんぜん分からない。
ふしぎな話をしてくれるときもある。この間は「どんなに大きな紙も、9回以上は折れない」という話を教えてくれた。(家でやってみた。たしかに9回しか折れなかった)
わたしがいるのを見つけると、すすすっと近寄ってきて、「ねえねえ、おもしろいこと教えてあげようか?」と、目を見ながら小さい声で言う。(いつもではない。手品もお話もないときの彼女は、目があってもスルーだ。クールな人なのだ。)
彼女のお母さんに、「◯◯ちゃん、手品じょうずですねー」と声をかけたことがある。お母さんは、「手品ですか?」と驚いていた。家ではやっていないという。しまった、秘密だったのかあれは、と思って、それ以上は聞かなかった。(が、それにしても、6歳の子が、家族に知られずに手品やふしぎなお話を習得することが可能だろうか?)
お迎えの時間の関係で、彼女に会える曜日はだいたい決まっている。その日は心のどこかで「今日はあるかな。」と楽しみにしている自分がいる。楽しみだけど、でも期待しすぎないように。平静を装いながら、保育園の玄関を通る。
彼女はまだ小さいのに、もう自分の秘密をもっている。そしてそれを時々こっそり見せてくれる。とてもふしぎで、そして素敵な子だ。